未開人の研究日誌

東京大学で教育の研究をしています。2023年4月現在M1です。

最近のニュースについて(後)

確か経済格差の話と大学入試改革の話をすると言っていたような気がします。

・経済格差について
英語民間試験の大学入試新テストへの導入に当たってハードルとなったのが富裕層は多く試験を受けられ不利だということです。文科大臣が「身の丈にあった受験をしてください」と言って炎上しました。まあ国が格差を助長するのは問題ですね。「遠くまで試験を受けに行く緊張感」を味わうのはとても大事なことだとは思いますが、それなら自分の高校でGTECを受けられる高校がある状況と矛盾するのでは。地方活性化にも反する政策であると考えます。
とはいえ金持ちの子供は甘やかされて育つからダメ、という訳ではありません。家庭の教育方針が正しければお金があるに越したことはありません。これに関してはエビデンスに乏しいのですが、まあ自分の実感ということで。
因みに失敗するとどうなるか。現環境大臣はまだマシな方で、元農水次官のように殺人事件に発展してしまうこともありますから…
でも99人の壁を見た実感も同じだったな。あそこで戦っていた小学生は恐らく皆裕福な家庭なのでしょう。いろいろなイベントに連れて行ってグッズを買ったりするのも楽なことではありませんからね。
丁度一年くらい前に南青山に児童相談所を作ることに反対意見が出て問題になっていました。昨年は受験生だったためニュースをあまり見ていないので確かなことは言えませんが、金持ちというだけで叩かれるのはおかしいです。中には性格が歪んだ人がいるのも事実ですが。こういう問題についても専門的に議論されているのかは興味があります。
あと大学の新奨学金制度に伴い今まで対象だった学生の一部が対象から外されるかもしれないという問題がありました。これについては本来学生が動く前に大学側が対策しなければならない問題でありまして… まあ詳しいことは知らないので口を挟むことはできませんが。
まあまとめるとお金がないと何もできないけれどお金がある状況こそ親の教育方針が本当に問われる、ということでしょうか。

・大学入試改革はどうあるべきか
何か色々混迷しましたが結局英語民間試験、共通テスト記述式の両方とも見送りになったようで。とりあえず現状の問題点を整理してみましょうか。最大の問題は私立大学のマークシート式の入試改革のようです。
柴山前大臣がこの記事について取り上げていましたね。一部引用します。「しかし、問題はやはり早慶以外の私大です。早慶は独自に記述式試験を実施する体制も能力もありますが、他は難しい。このままだと他の私大を受ける受験生は、相変わらずマークシート向けの受験勉強をすることになる。だから、3本目の柱として、私大も利用する共通テストに記述式を導入しようとしたのです。」これはどういうことでしょうか。
大学入試の目的は大学が欲しい人材を取ることであり、原則として自校で入試問題を作り選抜を行うものだと思います。そんな選抜も行えないような大学が大学として存在していいのでしょうか。Fランでも教授は一流大学を卒業しているはずです。(仮に違うとしたらポスドクが多数いるのに何故彼らを雇わない。「彼ら」の中に将来自分が入るかもしれませんが。)あと受験者数の問題ですが、早稲田ができるならたいていの大学ができるはずです。どちらにしろ私大のために国が忖度しているのがおかしいのです。入試くらい自校でやれ。
因みに僕は推薦、指定校、AOについては反対はしていません。これは前回の記事で述べたように多様性を確保するためです。決まるのが早すぎるような気もしますが。この観点から考えると2024年度からの入試は酷いものになりそうですね。現在一般入試で行われている内容と推薦入試で行われている内容を合わせて全受験生に課すような感じでしょうか。しかし全受験生に同じ試験を課すとどうなるか。例えば「主体性評価」という項目が加わり、部長などが加点されるようです。これによって起こるのは部長などを積極的に引き受けるような特定の属性の人しか採らない、多様性の正反対の状況に陥ってしまうわけです。本当は部長を裏から補佐する人も必要ですし、チームプレイより個人で追求したいことがある人がいるかもしれません。もっと言ってしまうと、入試のために部長をやる人こそ一番主体性がない人と言えるではないですか。これは思想の押し付け、特定の属性の人間の大量生産に他なりません。新大学入試が最も避けなければならないということです。
多様性を確保するには①入試方法の多様化②客観的な入試の実施のどちらかしかありません。現在行われているのが②で、徐々に①に移行しつつあるという感じでしょうか。②は平等性を重視する方式ですが、その前提が平等ではないという問題点があります。男女格差や経済格差がその例です。それを解消するには①しかありません。金魚すくいで大学に合格はやりすぎにしても、「本当は主体性があるけどそれを入試の場では発揮できない人」を救い上げないといけません。正しくは「大学入試の段階では人に正しい評価を受けない人間」でしょうか。こういう一般的な枠組みで捉えきれない人こそ既成概念を打ち破り、AI時代にも生き残れる人だと思うのですが。
まとめると、一般、推薦、指定校、AO、内部進学はそれぞれの利点があるので、改良しつつこのまま残していくのがベストと言えるのではないでしょうか。推薦などの学力が低いのは制度が悪いからではなく個々の大学の運用方法が悪いからです。